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日々は過ぎる。 されどわが胸に残る風。
  2024/05/21 [13:39] (Tue)
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  2009/10/11 [22:35] (Sun)
無皇刃譚を見ました。
面白かったです。

やっぱり殺陣っていいよね。


そして全然祝ってないお話を一つ。



薪を拾って帰ってくれば
外門のところでそいつはごそごそしていた。

そいつを見かけたのは随分久しぶりな気がしていた。

「・・・・・何やってんの、あんた」
「あ、銀時、久しぶりですね」

声をかければ、あっけらかんとした表情で
そいつはこちらを振り向いた。

しばらく出掛けると言って、姿が見えなくなったのは
確か晋助の誕生日が過ぎた頃だったと思う。

それから城下が急に騒がしくなり
小太郎も晋助も、他のヤツラも、なかなか塾にこれなくなった。

まぁ、目当ての人間が居ないのだから
来ても仕方ないと思ったが。

俺一人で、ここでそいつを待っていた。
待っていると言う表現は、何かしっくりこない気がしたが。

「向こうが落ち着いたので、帰ってきたんですよ」

いい子で留守番していてくれたみたいですね。
そう言ってそいつは俺の頭を撫でる。

「・・・向こうの居心地よくて、帰らないかと思ったけど」

そしたら、俺がこの家貰うのに。
そんなことを言ってみても、そいつは動揺もしない。

「銀時が見ててくれるんなら、私は安心して出掛けれますね」
「・・・だから、そうじゃなくて」
「そしていつでも、安心して帰って来れますね」
「・・・・・・・・・・・」

そしてこいつはいつも人の話を聞かない。

「そんで、しばらくは居んの?」
「・・・しばらくは居るって」
「今度はどれくらい居るんだ?」
「だから、ここは私の家なんですけど」

だから帰ってきたんですってば、とちょっと慌てたような顔をする。
まるで出張から帰ってきたら子供が反抗期だったという父親の顔だ。
面白いけれども、少し複雑な気分だ。
そういや反抗期なのか、俺。


「とりあえず、あんたが帰ってきたこと知らせてくるわ」

薪をおろして、刀を手に握り締める。
走り出そうとして、呼び止められた。

「あ、銀時」
「なに?」
「ただいまもどりました」

そう言って、そいつはいつもの笑顔を浮かべた。


「・・・・・おかえり、先生」










目を開ければ、見慣れた天井が見えた。

「夢・・・・か?」

目を瞬かせて、周りを見渡す。
テーブルにはごみの山と、コップや皿やらが散乱している。
床には酔いつぶれた人間達。
鼾や時折歯軋りの音が聞こえる。

さらに視線を動かす。
事務机のジャスタウェイ時計の時間は、午後11時59分。
毎日めくっている、日めくりカレンダー。
数字は10日。

「・・・・・・・・・・ああ、そっか」

合点がいった。
だからあんな夢を見たのか。

あの夢の続きは、俺の記憶の中にある。

立ち上がり、カレンダーへと近寄る。
いつもは朝やることだが、たまにはいいだろう。

「ありがとよ、先生」

秒針が、12を差すと同時に、手に持った紙を引き千切る。
新しい一日が、また更新された。


『おめでとう』と、言われた気がした。

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