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日々は過ぎる。 されどわが胸に残る風。
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  2011/02/17 [21:17] (Thu)

発掘したのでちょっと載せてみる。
ミツバ編の最後あたり。
「辛ぇ」からの派生。
銀時の一人つぶやき。



 

「辛ぇ」

激辛せんべいをかじりながら呟いてみた。
もたれかかった給水タンクは冬の冷たさを助長させてくれる。

ああ、死の温度だ。

あいつはずっとせんべいを食べ続けている。
律儀な野郎だ。

あの女は全部知ってたぜ。
何をかって?

自分の旦那が何やってるかも。
自分はもうじき死ぬことも。

俺がそれを知っていたということも。

こういう時だけ働いてくれる感とやらに苛苛する。
どうせならパチンコするときに働いてくれよ。
そしたら、新八に怒られなくて済むんだから。

まだせんべいを食べる音が聞こえる。

まじでか。
こんな辛いもん、よく食えるよな。
惚れた女か。
よくわからねぇけど。

最期ぐらい、立ち会えばよかったのによ。
死んだら二度と会えねぇってホントだぜ?

沖田君も大変だよな。
葬式って、悲しんでる暇なんかねぇモン。
あのじいさん看取ってやったときもそうだったな。
俺たちはあんまり関わらんかったが。
みんな事務的に片付けておしまい。

けど最後の付き合いに骨は拾ってやった。
無縁仏だから、施設の人間が持ってったけど。
焼かれた直後の骨ってスッゴク熱いんだよな。
6月半ばだったから、火葬場は熱気ですごかった。
今は冬だからちょうどいいか。

あの熱さを抱えて帰るのか。
死んだのに、骨なのに熱いんだぜ。

ん?なんだか身体が熱くなってきた。
あー、せんべいのせいかな?

まだ食ってやがる。

たしかにあの女はいい女だったよ。
強さも、強(したた)かさも持ってやがった。
女って生き物はすげーよな、ホント。

恨み言一つ零さずにいきやがった。
全部知ってやがったくせに。
俺たちは、だから忘れることなんて出来やしねぇ。
そんなことしなくても、忘れやしねぇよ。

一袋、きっちり食い尽くす気だぜ、あいつ。

辛いのがそんなに好きだったのかよ。
もう一つの意味を込めて送ったんだろうに。

全部知った上でも、お前ら本当に。

やめた。
感に憶測に重ねたところでどうってなるわけじゃねぇ。

きっちり弔ってやるのが筋だ。

手に持ったせんべいを見つめてみた。
一口だけ齧ってみたせんべい。
唐辛子が、赤色をきっちり主張してやがる。

正直、食いたくねぇよ。
俺は甘いモンが好きなんだ。

だけど食ってやるよ。
アンタの弟と大親友だって言っちまったからな。

諦めて、口に放り込んだ。

 

「辛ぇ」

 

 

 


じゃあな。
これで仕舞いだ。

 

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